ヴァリアー本部の談話室には、とても暗殺部隊とは思えないほどのんびりした空気が漂っていた

は膝の上にマーモンを抱きかかえ、分厚い本を読み、その隣でベルがに寄りかかるようにしてテレビを見ている

逆側の肘掛けにもたれてくれと最初こそ思ったが、この際母親に踏みつけられるよりマシなので何も言わなかった

そしてルッスーリアは雑誌を読んでいた

なんていうか

 

「(家族みたいだな)」

 

シスコンの兄もドSの母もいない。ああ、なんという天国っ!

そりゃXANXUSだってSだが、母上に比べればMに分類してもいいくらいだ

少なくとも人を足蹴にした状態がノーマルじゃない

そういえばスクアーロ(とレヴィ)はどこへ行ったか・・・

ページをめくる手を止め、窓の外を見ると最高の快晴だ

後でスクアーロたちを誘って散歩にでも行こう

そう心に決めた途端、大きな衝撃音が響く

驚いたは本を取り落とし、それがベルの足に落下。もちろんキレたベルは、音の方へナイフを投擲

「う゛ぉ゛おい!!」

聞きなれた怒声

少し嬉しくなって振り向くと、誰かが抱えた段ボールでナイフを防いでいた

三つ重ねた段ボールで隠せないほどの長い銀髪。間違いない

「ドアくらい静かに開けらんねーのかよカス鮫」

言い返したそうに口を開いたスクアーロが、すんでのところで言葉を飲み込んだ

言い返さないなんて珍しいと思っていると、パンパンに膨らんだ段ボールを下に落として肩を掴んできた

「仕分けを手伝えぇ!」

そう叫んだスクアーロの目は血走っていた

 

 

 

「なあ、スクアーロ」

「なんだぁ」

「ものの見事に私の知り合いばかりだな」

白い山から手紙を引っ張り出しては、該当する頭文字の箱に入れ、うんさりしてため息をついた。ちなみにの言う知り合いとは顔は見たことあるが、話したことがないとか、ほとんど話したことがない人物になる。それ以上だと友達だ

早朝からXANXUSの手紙の整理に追われていたのだろう。せっかくの休みを潰したスクアーロはだらしなく机に乗り上げ、手紙を引き抜く手はとても遅い。おまけに時々舟を漕いでいた

そう今日はXANXUSの誕生日。ヴァリアーの隊長、おまけに未だに九代目の息子であると認識されているので、プレゼントの量は尋常なく多い

さらにスクアーロ曰く、近年はより増えたらしい

将を射んと欲すればまず馬を射よ。XANXUSたちヴァリアーがルナ十代目のと仲がいいことは裏社会では有名なことだ

九代目ファミリーの幹部はそれを良く思っていないが、は親友かのごとく接している

そうすればヴァリアーから足掛かりを掴もうとする輩が増えるのは自然の理で、さらに次期十代目ファミリーとも親密な仲なのだから、なおさらヴァリアーに取り入ろうとする人間が増える

つまりは心から祝おうという気持ちがある者は一握りいるかどうかなのだ。腹立だしいことに

そもそもそんなヤツらがXANXUSと仲良くなれるかって話だ。アイツは気難しいんだ

いつの間にか手に力が入っていたらしく、握りつぶされた紙の封蝋が剥がれかけていた

それをスクアーロが取り上げ、後ろのごみ箱に投げ捨てる

もしかしたら重要な手紙かもしれないが、そんなことは知ったことではないという風だ

「ところでXANXUSの誕生会はいつやるんだ?」

またもや舟を漕いでいたスクアーロは呆れたようにぐしゃりと前髪を乱した

「時間ぐらい確認しとけぇ。一時頃から客が来るだろ。六時頃からパーティーが」

「九代目主催のではなく、お前たちが開くほうだ」

指折り数えていたスクアーロが訳が分からないというようにを見た

眠気で聞こえてなかったかと、もう一度言う

「自分のボスの誕生日だ。開くんだろ?」

「うちのボスさんがんなこと望むかぁ?そりゃ、初めの頃こそやってたが、当日は今日みてぇなパーティーがあるし、次の日からは仕事でそれどころじゃねぇ。最近じゃ下っ端のやつらが騒いでるくらいだぁ」

欠伸を噛み殺したスクアーロが面倒臭そうに言うと、頭を振るって眠気を追い払った

そうあとルッスーリアがそうとか言ってた気がするが、全くもって耳に入らない

まさかと思った。の場合は誕生日にはノッテ総員の仕事がキャンセルされ(というか全員がやらなくない)、ファミリー、はたやシマの住民を巻き込んで騒ぐというのが通例だ。この時ばかりは地位も名誉も関係ないので、イジりやすい性質の幹部などは真っ先に襲われる

そして同盟ファミリーを招いてのパーティーは次の日やるので、六月十一日がの誕生日だと思っている者が多い

XANXSUが捻くれたのは、誕生日にまともに祝ってもらえないからに違いない!

という変な結論を導き出した

机を勢いよく叩いたものだから、手紙の山が雪崩を起こし、床が真白になった。封蝋の赤が血のようにアクセントになっている

そして驚いているスクアーロに「今日誕生会やるぞ!」と叫んで、嵐のように部屋から飛び出していった

腕を掴まれたスクアーロはその勢いに抵抗できずに、ただ引きずられていった

 

それからのの行動は迅速だった

必要なものを紙に書き出し、スクアーロに手配するように言いつけ、さらにプレゼントの整理をしていたらしいレヴィと自室にいたベルにスクアーロを手伝うよう頼み(があまりに生き生きしていたので断れなかった)、自身は半端ないくらい緊張しながら九代目に直談判をしに走った

ちなみに九代目とのガチンコチェスバトルに勝利して、ずらす約束を取り付けた

 

が部屋を飛び出してから約二時間後・・・

キッチンではヴァリアー隊員たちが見たら卒倒したに違いないような光景があった。何せあの幹部たちがエプロン装着でキッチンに集結しているからだ

その筆頭は。ちなみにこれが知れたらヴァリアーどころかボンゴレまで大混乱になる。が十代を一般市民生活で過ごしていたと知る者は一握り以下しかいないのである

「ではティラミスを作ろうと思う」

しかも執事のような格好。某執事マンガの悪魔の料理姿を思い出してもらえると分かりやすい

「なんでティラミスなんだよ。普通ショートケーキとかじゃね?」

「ベル、XANXUSの好みを考えてみろ。普通に考えて甘い菓子を食べると思うか?」

ショートケーキを食べるXANXUS

紅茶と一緒にクッキーを食べるXANXUS・・・

 

 

『(想像できねぇっ!!)』

 

 

「(昔は食べてたんだけどな)」

 

 

ヴァリアーメンバーと正反対のことを考えながら、冷蔵庫から材料を取り出す

さっそく取り掛かりたいところだがその前に

「そこの鮫さん」

「う゛おっ!?」

ちょうどキッチンから出たところにいたスクアーロを覗き込む。バレてないとでも思っていたのだろうか

ちなみにスクアーロは買い物の後、に寝ろと部屋に追いやられ、少しだけ睡眠を取り今に至る

「入るか寝るかどっちかにしないか?気になって仕方がない。ついでにやるなら髪を結んでくれ」

別に呼ばなくてもよかったのだが、ルッスーリア意外に唯一料理経験がありそうだった

しかしは忘れていた。これだけ立派なキッチンには立派なシェフがついているのだから、そういう家に住む住人は料理する必要がないということに・・・

「まず初めに卵を黄身と白身に分ける」

そう言って卵を割り、二つのボウルに分けた。やり方は分かっているだろうが、念のためだ

 

 

 

 

だが

 

彼らは分かっていなかった

 

 

 

隣からの不審な音で見てみれば

「・・・」

「スクアーロ!左手は使うなよ!」

そして他を見れば

「マーモン、黄身と白身に分けてくれっていっただろ?」

「これ難しいよ」

「まあ、手が小さいしなぁ」

「なーー。これどうやって割んの?」

「見てろよ!なんとなく予想はしてたけどさ!」

「ホントに駄目ですねー堕王子だからですかー?」

「いや、それは言い過ぎだろ・・・ってお前誰だ―!!??」

「あんたこそ誰なんですかー」

堕王子と言われナイフを投げたベルを宥めていたので、普通に相槌を打ってしまったが、冷蔵庫の前にカエルがいる

しかもアイスを食っている

逐一問いただしたいところだが、ちょっと目を離した隙に後ろが大惨事になっていることぐらい、音で容易に分かった

「マーモン、ホットーケーキを作らない!」

「じゃあこの卵はどうするんだい?もったいないよ」

「後で作ってあげるから、火傷でもしたらどうするんだ!

うわっ!レヴィ、頼むから動かないでくれって!」

「ぬ」

「レヴィ何やってるのよ!、先に着替えた方がいいわよ?後で臭くなるといやだし」

「そ、そうだな」

「息乱してんじゃねーよムッツリ」

「牛乳にまみれたほど妖艶なものはないだろう!」

「ホントに気持ち悪いからやめてくれないかい?」

「ここは俺が引き受けるからさっさと着替えてこい!」

「悪いなスクアーロ。鼻血出てるけど大丈夫か?」

「うっわ、スクアーロ何興奮してんだよ」

「うるせぇぇえぇえ!!だったらてめぇもを変な目で見るのやめろぉ!!」

は俺のもんだからいーんだよ」

「なんでもかんでも自分のものにするクセやめたほうがいいですよー。ただでさえ趣味悪いのに」

「あぁ?」

「ちょっとベルちゃんにフラン。キッチンでケンカなんかしちゃだめよ〜」

『うるせーオカマ』

ダブルラリアット炸裂

「ほら、これで拭きなよ」

「ありがとな。あー、これ風呂に入らなきゃダメかな」

「一緒に入るかい?」

「そーするか」

「おいぃいぃい!!何さりげなく約束とりつけぶふっ!!」

突然スクアーロが視界から消えた。と思うと強烈なアルコール臭が漂う

瞬時に事態を悟った一同は固まった。ベルはナイフを投げた態勢のまま、フランは頭を庇った状態で、レヴィはスクアーロにたたき沈められたまま、ルッスリーアはダメージをくらったところを押さえて。ちなみにスクアーロは床と熱烈なキスを交わしていた

「うるせぇ」

ど う し よ う !

今回のパーティーはサプライズ。よって九代目のパーティーが延期になったのも知らせていない

なのに主役が準備中が終わっていない―まだ何一つ進んでいない―ところに来てしまった

超直感はなくともXANXUSは昔から勘が鋭いのだ

「や、やあ、XANXUS。おはよう」

「・・・来るなら連絡入れろって言っただろうが」

「いや、だって、まだ起きてないかな―と思ったからさ」

XANXUSの起床時間は十一時過ぎ。の訪問時間は七時(早

っていうかもう十一時!?時計を見たは焦る。これでは準備が終わらない

平静を装おうと頭から卵の殻を摘まみ取る

どう言い訳すればいいんだ?ヴァリアー幹部がキッチンに集結しているこの状況を

「あー、XANXUS。悪いが外に出て」

「もういいんじゃね?この調子じゃどうせ終わんねーし、ボスもやれば」

『何言ってんだ(ぁ)!!??』

スクアーロも驚きで復活してしまった

泣く子もさらに号泣するXANXUS様がはてなマークを飛ばしている。九代目のパーティー準備をヴァリアーが担当するわけがなく、これ以上隠すのは無理だと悟った

残念に思い頭を掻いたは諦めがついてXANXUSに笑いかける

「九代目のパーティーを明日にずらして、今日私たちでお前のためのパーティーを開くんだ

だから今日は仲間水入らずで騒ごうぜ?仲間じゃねぇとか言うだろうけどな」

「まーその前に準備があるが」と手を引いて中に連れ込むと、お馴染みのメンバーが全員集合だ

一番尊敬していて、一番慕っていて、一番祝いたい

口では憎まれ口を叩いていても、本当はそうなのだ。建前だけの祝いの言葉じゃなくて、心の底からの言葉

心なしかいつもよりXANXUSの顔が柔らかい気がした

それを指摘したら、やっぱりスクアーロが壁にめり込んだ

『Buon Compleanno XANXUS!!』

XANXUSの加入により作業はさらに難航を極め、結局は酒を引っ張り出してが肴を見繕う結果となった

 

 

 

Che accade questo!

XANXUS、プレゼントだ!)もーそんなセクシーな恰好してたらボスに襲われちゃうわよ!)、さすがに飲みすぎだぜぇ)(そういうスクアーロもだよね)(だっせーの)っ!俺を踏んでく)((くたばれ))天空ライオンレオネ・デイ・チエ―リverビアンカぁー!)((!!??))(しかもお揃いなんだよ!)(マジか!※XANXUS)(ツナと!!)(う゛ぉ゛おい、落ち着けXANXUSぅぅうぅう!!)

 

 

 

 

 

あとがきというか懺悔?

初めはノリノリだったんだけど、最後の方で力尽きたっていう←

ホントはが九代目に直談判に行くシーンもあったんですが、別にいらねーやって思ってカット。簡単にいえばが牛乳かぶったシーン書きたかっただけっていう(殴

ちなみにタイトルの和訳は『こんなことになるなんて!』。自動翻訳でやったのでスペルがあってるかは知りません。誰か知ってたら教えてください(土下座

ちょっと遅れたけどおめでとうボス!いつまでもふてぶてしいあなたでいてください!あともうちょっと本誌で登場回数増えて!