毎日のように届く深紅の薔薇
他の花が送られてくるときもあるが、色、量ともに紅い薔薇には負ける。は部屋を見回して溜息をついた
花瓶に入れられたものもあるが、まだ包装紙に包まれたままのものもある
この部屋はもともと応接室として使われていたものだが、がノッテのボスになってから贈り物の量が3倍以上にも増し、花の類はこの部屋に収納されるようになったのだ。断ればいいものだが、せっかく買ってくれたものだ。それに花は枯れるのだから、相手も処分に困るだろう
紅に埋もれた白いカードを抜き取ると、名前を確認し、床に放り投げる。目的の人物から送られてきたことなど一度もない
その行動が終わった後のの足もとは白で埋め尽くされた
「随分と荒れてんな、ルナ」
全く気付かなかったとでもいうように、目を丸くして驚いている風を装うとリボーンはフッと鼻で笑った
「別に荒れてはいない。カードは読まない主義だ。よく知りもしない相手からの麗辞やらなんやらを見ているとイライラするからな」
「ほお、オレとは反対だな」
「まあな」
リボーンは麗辞は素直に受け取る。いや、受け取るというよりそれを肯定するのだ
殺しの腕も容姿も一級品。一度パーティーに出ればあっというまに花形だ。おまけにボンゴレボス補佐という申し分ない地位まで持っている。どのような美麗な花でも彼の前では色褪せるのではないだろうか
だから、口の悪い私よりも妖艶な美女のほうが似合うに決まってる
考えていてなんだか虚しくなり、リボーンに向けていた視線を外に向けた
ノッテのシンボルである月が浮かぶ
「で、何か用があってきたんだろ?任務か?」
「用がなきゃ来ちゃいけねぇのか?」
「なるべくそうしてほしいな」
もしかしたらと期待するだろう
そう言えばからかわれるのは目に見えている。これならばリボーンが赤ん坊の頃の方が気が楽だった。抱きしめようと気兼ねしなくてすむ
「それならルナに茶々入れだな」
リボーンに視線を戻すと、彼はいたずらっぽく笑っていた。任務のときとは違う笑い
がその笑顔を見るたびに胸を焦がす思いをするなどと、リボーンは思いもしないのだろう
「そんだけ花束が贈られりゃ愛人には困らねぇだろ」
ズキリ、と胸が痛んだ。お前にだけは言われたくなかった
だがそれを胸の奥底に隠し、苦笑を投げる
「そうだろうな。お前はすでに5人いるのか?6人?」
「数えたこともねぇな。お前もなるか?」
「まさか。愛人はゴメンだ」
ああ、また自分を追い詰めた
そんな返答が返ってくると分かっていたのに、どうしてこんなことを聞いたのか
もう1秒もそこにいることは耐えられないと思い、イスから腰を浮かす
「もう行くのか、ルナ」
「曲がりなりにもボスだぜ?白兎にばかり仕事を任すのも悪いだろう」
ロングコートを翻し、ドアノブに手をかける。するとすぐにもう一つの手が合わせられた
パッと振り返れば至近距離に端正な顔。鼓動が速くなる
「リ、リボーン、顔が近い」
「それなら恋人ならいいのか、」
「何、をふざけて」
頭を掴まれ言い返そうとした口を柔らかい感触が塞いだ
「オレだって一流ヒットマンだ。こんな時間に遊んでる暇はねぇ」
「これからは花は全部断れ」
そう言い捨てるとリボーンは足早に去っていった
手に残されたのは誇らしげに咲く一輪の黒薔薇
花束よりも一輪の花を
(気高く咲く黒いそれはまさに彼の色だった)(次に会う時には私の手にはラバテラの花があるだろう)
黒薔薇の花言葉は「貴方の全ては私のもの」 ラバテラの花言葉は「承諾」
リボーンに胸キュン企画様へ提出します!