君の背中は思ったより大きくて安心すると同時に、




遠くへ行ってしまいそうな、そんな不安を感じたんだ

 

 

 

 



標的05 柿の種来襲

 

 

 

 

 


 

「うわああ!!」

もうダメー!!

自分に向かってヨーヨーのような武器が投げられるのを見て、ツナはきつく目をつぶった

だが痛みはいつまでたってもこなかった。その代りに聞き慣れた声がした

「ツナ。もう目、開けても大丈夫だ」

くん!?その傷!!」

はツナに背を向けていたが、右腕からは血が滴り、針が突き刺さっているのが見えた

先ほど負ったばかりの傷だというのに、すでに地面に赤い水たまりができている

はツナの視線が腕に注がれているのを見ると、ニッと笑って口を開いた

「へーき、へーき。ただのかすり傷だって」

「いやいやいや!大けがだよね!?もろに刺さってるよね!?」

「日常茶飯事だから」

「いままでどんな生活してたの!?」

おお、この状況においてもツッコミは健在。恐怖のあまりツナの唯一のアイデンティティーが失われでもしたらどうしようかと!!

はしゃがみこんで、あちこちツナの体を調べた

「ツナ、どっか怪我してないか?」

「う、うん・・・、オレは大丈夫だけど、獄寺くんが!!それにくんも早く手当てしないと!!」

「私は平気だって。隼人はやばそうだが・・・。じゃ、ちゃっちゃとすませるか」

そう言い終わった途端、安心するような柔らかい笑顔とは一転して険悪な表情を千種に向けた

「・・・お前は無傷で連れてくるように言われてる」

「じゃー、もう完遂は無理だな。それにもう傷つけられないぜ?」

右腕を勢いよく振るうと腕に刺さっていた針が抜け、乾いた音を立てて地面に落ちた

「これ以上やるつもりなら手加減はしない。だが私は隼人を治療しなきゃならないし、お前は深手を負ってる。それでまさか私に勝てるとは思ってないよな。ノッテファミリーの名前を知らないほど馬鹿ではあるまいな?」

それを聞いた千種は驚いたように目を見開いた

どこの所属か知らないで狙っていたのか、六道が伝え忘れたのかは知らないが、良い方向に事態は転びそうだ

張りつめた緊迫感に耐えきれなくなったのか、ツナが唾を飲み込む音が聞こえた

「城島の話は聞いたはずだ。今回は痛み分けでまた次回ってことで了承してくれないか?」

本当ならば数秒だっただろうが、ツナにとっては何時間にも思える沈黙が流れた

突然千種が動き出したのを見て、は身構えたが千種は反対方向に歩いて行った

見えなくなったのを確認すると、すぐさま獄寺に駆け寄る

「おい、隼人!大丈夫か!?」

「獄寺くん大丈夫!?」

返事はなくその顔はつらそうだ

 

毒か・・・

 

は髪の毛をほどくとそのベルトで、二の腕の上あたりを縛り獄寺を抱え上げた

「(ここらで近い病院は・・・)」

ノッテ系列の病院は比較的大きいところが多い。そこは駄目だ

となると、引退したファミリーがやってるところしか残っていない

「(迷惑はかけられないんだよなぁ)」

そこまで考えて、腕のいい闇医者が一人いたことを思い出して青ざめた

アイツなら診てはくれなくても、それなりの設備を持っているはずだ。たとえ保健室であろうと勝手に持ち込んでいそうだ

変態じゃなきゃ万事OKなのにっ・・・!

「おーい、ー!ツナー!大丈夫かー!?」

もうどうこういってる場合ではない

山本が走ってきたことで、は覚悟を決めた

 

 

 

「なぜ?どーして隼人が入院してるのがここなのよ」

「いや、その、これには深い訳が・・・」

「ビアンキちゅわーんv」

「よるな!!」

は自分の右腕に包帯を巻きつけながらふと思った

美女と野獣。英名はビューティーアンドビースト

わー、私って上手い

ビアンキは獄寺の見舞に来たのだろうが、見舞い品は全て毒化して殺しに来たようにしか見えない

「なんだよー。が他んとこの迷惑にはなりたくないって、保健室に連れてきたんだぜ?男の診察はしねーけど、ベット貸してんだしさー、いーじゃん、おじさんとあそぼーぜ」

「よくないわ!」

ビアンキの鉄拳が炸裂して、シャマルは地面に倒れ伏した

もこんな男のとこにきちゃダメじゃない!間違いがあったらどうするの!?」

間違いってなんの

やはり左手では包帯は巻きにくい

苦労しているとツナが近寄ってきて代わりに巻いてくれた

「ありがとな!」

笑顔を向けて礼を言うと、ツナを複雑そうな顔をした

どうかしたのだろうか

どうしたのか聞こうとしたが、そこでシャマルが手招きしていることに気がついた

 

 

 

並盛中にはどうしたことか保健室が二つある

一つは普通の保健室だが、もう一つはベットしか置いていない

並盛中の七不思議らしいが、高確率で雲雀に咬み殺された奴らの緊急収容所に違いない

「お前、毒は平気なのか?」

唐突に聞かれて多少驚いたが、腕を動かしながら答える

「ああ。このくらいの毒なら平気だ」

「このくらいって・・・、それ、しゃれになんねーもんだぞ」

「母上によく食事に混ぜられてるよ」

「手厳しいのはかわんねーのか、あいつは。オレなんか半径1m以内に近寄らせなかったしな」

かなりいい女なのにもったいねーよな

そう言うとシャマルは窓を向いた

「ルナがまさか不器用なあいつと結婚するなんざ、誰も思わなかったよな。おまけにこんな美人の子供まで持つとは」

シャマルは懐かしそうにを見た

その時窓から風が吹いてきての髪を弄んだ

結んでいなかったため大きく広がったが、髪はさらさらと音を立てて綺麗にまとまった

「今回は迷惑かけたな。この借りはいつか返すから」

「じゃ、キスで」

はぁ!?

珍しくまじめな雰囲気が漂っていたのに、その一言であっというまにぶち壊しだ

なんてことしてくれたんだ、貴様

は引きつった笑みを浮かべた

「や、聞き間違えたんだよな!まっさか、そんなこと!」

「オレは本気だぜ」

誰か聞き間違えだと言ってー!!!

後ずさりするとベットがぎしりと音を立てる

はあっというまに壁に追い詰められた

「シャマル!ほ、ほら!隣にビアンキいるしな!」

「気にすんなってー。気やしねぇよ」

だから来たくなかったんだよぉぉおぉお!!

母上も散々ラブコールが来たらしく、その度に玉砕したがしぶとく付きまとってきたらしい

そのウザさと生命力はゴキブリ並みだとか

すぐ目の前にはシャマルの顔があり逃げるに逃げられない状態だ

あああ!白兎すまない!!

もうここまでと観念した

「死ねぇぇえぇええ!!」

「うおっ!?」

ズバァン!カカカカッ!

今までシャマルがいたところは、ベットから真っ二つになり、半分くらいの深さまで無数のトランプが突き刺さっていた

間一髪避けていなかったら確実に死んでいただろう

様!大丈夫ですか!?まだ純潔は奪われてませんか!?」

!そこのクソ親父に何もされてないな!?何かされてたらお兄ちゃんが仇を取ってやるから!!」

「お、おう・・・、平気だ・・・」

あまりの剣幕に汗を流していると、騒ぎを聞きつけたらしいツナ達が駆けこんできた

ちゃん、どうしたの!?って、なんでお兄さんがここに!?」

「よっ!弟よ!」

「え、ちゃんくれるんですか!!」

「誰がテメェにやるかよ、ボケが」

自分で言わなきゃいいだろうよ。私なんかもらってもツナのいい迷惑だよ

というかなんで兄上が?

そこでクロムが白衣を着ていることに気がついた

「まさか、あんたも保健医とか・・・」

「あ、そっか。は知らねーんだよな」

隣に座った山本に視線を向けた

「お兄さん、2、3ヵ月前くらいから理科の教師やってんだよ」

「1年担当なんかにまわされっから、愛するに会えなかったんだよ。くっそ、あの校長め・・・」

「グッジョブ校長。ってか、お前ら隼人を見てなくていいのか?」

どんだけ冷たい扱い受けてんだ

批判するように見回すと、ツナが答えた

「白兎が風月さんを連れてきてくれたから、今見てもらってるんだけど」

「ほー、葵ちゃんが」

「シャマル、葵にまで手をお出しになったらその手が飛びますよ?」

さらっと恐ろしいこと言わないで白兎

白兎に正座をさせられているシャマルから目を離すと、ツナに言った

「だからって一応ついてろよ。特にツナは守ってもらったんだろーが」

「大丈夫だよ。ビアンキのポイズンクッキングくらっても生きてるんだし、オレの右腕って言うんだったらこれぐれいでやられちゃあ困る」

え、ちょっとスレた?

というかこのいいようだと、先ほどビアンキが持ってきたお見舞いの行方が非常に気になる

 

 

 

<雑記>

今回はシャマルが出張りました

黒ツナが書けない!白兎なら書きやすいのになんで!?次回あたりから頑張って黒ツナさんを出そうと思います

あ、そういえば初めての背景ですね。うちのEDITが何故かスタイルシートを使えないという事態で、どうにかこうにかできたんですよ・・・