「雲雀!」

 

骸を倒したと同時に、同じく倒れこむ雲雀を抱きとめる。

 

やっぱり肋骨が折れてるんだから無理させるんじゃなかった。

 

だけどあのままじゃ腹の虫がおさまらなかっただろうし、放置すると逆に折られただろうよ。

 

 

 

 

 

標的17 崇り

 

 

 

 

 

「ついにやったな」

 

「こ、これで家に帰れるんだ!」

 

「しかしお前骸戦見事に役に立たなかったな」

 

「ほっとけよ!」

 

「期待はずれもいいとこだ」

 

ちゃんまでー!?」

 

ボンゴレの血が目覚めると思ったのに。

これなら一人で行くとルナから九代目に伝えてもらえばよかった。

そうため息をついて手錠を取り出す。

 

「何やってんだ?」

 

「仕事だよ仕事。ルナに脱獄囚を生きたまま連れて来いって言われてな」

 

「そんな!」

 

マフィア間のいざこざ云々はツナには分からないかもしれないが、ちょっとしたことでも同盟ファミリーの不安は煽られるものだ。

例え連続殺人犯の正体がただのド変態だったにしろそれは変わらない。

複雑な顔をするツナはまだまだ甘い。マフィアとしての心得が分かってないし、自分がどんな立場か分かっていない。

 

「そんなことより早くみんなを病院に連れていかないと!」

 

そんなことって。

もしかしてあの「そんな!」は「生かしとくの!?」の意味だったんですか。

いや、深読みのしすぎだ。

 

「それなら心配いらねーぞ。が連絡入れといてくれたからな」

 

「いつの間に入れてたんだよ」

 

「確かに入れたが・・・・。なんでリボーンが知ってるんだ?」

 

さっき山本のところにいたとき、葵に伝えたが空気が空気だったので伝えられずにいた。

不思議に思っていると、リボーンが不敵に笑う。

 

のことならなんでもお見通しだぞ」

 

「なるほど」

 

「それおかしくない?なるほどっておかしくない?」

 

「リボーンさんの諜報能力に対してのなるほどなんじゃないっスか?」

 

いや、違う。獄寺ごめん。

真面目な予測を立ててくれた獄寺には申し訳ないが、リボーンが言うから納得しただけで、可愛いから別にいいじゃないと思っただけで。

とにかくあなたと同じ理由じゃないんです。

 

「その医療チームは不要ですよ」

 

骸が引き金に指をかけて、それをツナに向けていた。

慌てて獄寺が間に入り、が骸に愛銃を向ける。

 

「なぜなら生存者はいなくなるからです」

 

「じゃあお前も死ねよ」

 

「誰ですか!今さらりとひどいこと言ったの!」

 

私じゃない。違ーよ。私じゃありませんよ。俺じゃねーな。

前科がある(ありそうな)人間は全員違うと首を振る。最後に残るのはあと一人。

・・・。

 

「クフフ、まあいいでしょう。

これから死ぬ人間に当たるのもバカみたいですしね」

 

そう言うと骸は銃口を自身の頭に向けた。

ぴったり当てると不発に終わるので、少し空間を開けてある。

本気だ。

そう思った時にはもう遅く、

 

、しばしの別れです」

 

止める間もなく、

 

「Arrivederci」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

躊躇なく引き金は引かれた。

鮮血が飛び散り、骸の腕が落ち、身体も力を失った。

微かな硝煙の匂い。

ツナたちの顔から血の気が引くのが分かった。平然と事態を把握していたのは、とリボーンだけだ。

 

「捕まるくらいなら死んだ方がマシってやつだろうな」

 

「ちょっと本気で死ねよとか思ったけどそんな・・・」

 

「やるせないっス・・・」

 

「思ったのか」

 

いや、私も思ったけど。

骸の首に指をあてる。脈はなし。頭をぶち抜いたんだから当たり前だ。

果汁・・・、じゃなかった血液べったりな死体は殺人未経験者には少し過激すぎたかもしれない。

そう思って骸に上着をかけてやる。無下に扱って化けて出てこられても困る。

 

「簡単には成仏しなそうだよな」

 

「誰のこと?」

 

「いや、そこの変態のことだろ、・・・!?」

 

「どうしてごくで、・・・!?」

 

ぎゃあああ!!

と叫びたくなるのを必死で堪えた。

美女が怪我して出てきたら死亡フラグです。ついでに脇役がベットシーンに入っても死亡フラグです(黙れ

思いの外反応の悪いツナに不謹慎ながら期待を持つ。

怪我で立ち上がれない姉を見かねて、奇跡的に気絶しなかった獄寺が手を差し出す。

 

「すまないわね隼人」

 

ビアンキはそれに答えた。

トライデントがその頬を掠め、驚いた獄寺が尻もちをつく。

続いて最も愛する対象であるリボーンめがけてトライデントを振り下ろした。

正直この時は心臓が止まるかと思った。

やっぱりというかなんというか。しつこいというかなんというか。

 

「マイハニー、さあ抱きしめてください!」

 

「名誉毀損で訴えるぞ」

 

六道骸とツナが小さくつぶやくのが耳に届き、密かにガッツポーズを決めた。

 

「クフフ、相変わらず照れ屋さんですね。

せっかく僕が地獄の果てから帰ってきたんですよ」

 

「て、てめーなんで!」

 

「なんでといえば聞きたいことがある。

何故お前が憑依弾を持っている?エストラーネオが壊滅して、製法も実弾も失われたはずだ。

そして答えたらもう一回地獄に行け。むしろそのまま帰ってこないでくださいお願いします」

 

聞きなれない言葉に首をかしげるツナと獄寺に対し、リボーンは納得の表情だ。

疑ってはいたが確証が得られなかったのだろう。

二人を背後に今度はタガーを抜く。

白兎が一言も漏らさず聞いてくれるので、余計なことに気を散らさないですむ。

 

「いくらでもそれは言えません。

強いて言えば僕のものだから・・・、でしょうかね」

 

結局言うんだ。

ならばエストラーネオからその手の書物がなかったのにも合点がいく。

 

「ついでにこういうこともできますよ」

 

不意にビアンキが倒れた。

凍りつくような感覚が背筋を駆け抜け、咄嗟にツナへタックルをかました。

さっきまでツナのいた場所にトライデントが突き刺さり、木屑を飛ばす。

ごめん]世、ちょっと本気出した。

もろに腹に入ってむせこむツナが哀れだ。

 

「やはりお前の目的は・・・」

 

「クフフフ、目的ではなく手段ですよ。

若きマフィアのボスを手中に収めてから僕の復讐は始まる」

 

「エストラーネオはすでに壊滅した。どこに復讐するんだ」

 

「全てはマフィアの殲滅から始まる。

世界大戦・・・なんてベタすぎますかねぇ。

にはそれを僕の隣で見ていてもらいましょう」

 

ガキが。

苦々しく吐き捨てる。力の持つ者がどれだけ世界を狂わせるか分かっていないらしい。

言い終えた骸もとい獄寺は剣を投げ、ビアンキがそれを受け取る。

そして雲雀の首を切りつけた。

トライデントで傷つけられると憑依を許すという情報は取得済みだ。

 

「おいおいマジか」

 

アレで殴られると結構痛いんだよ。

フラフラと立ち上がる雲雀を見て、正直ビビった。

丈夫な身体に乾杯(君の瞳に乾杯的な

ツナへ力任せに殴りつけられるトンファーを受け止める。

こんな身体でよくもと思うほど重い一撃。

しかしそれからの攻撃はなく雲雀は倒れた。

 

「ヒバリさん!」

 

「また獄寺かビアンキに憑依するぞ。

特に、気をつけろよ」

 

「分かってるって」

 

獄寺が立ち上がる。そしてビアンキまでも。

分裂したか!?などと思っていると、今度は扉を破壊して犬と千種まで来た。

例え意識が戻ってもあの怪我で歩くのは不可能なはずだ。なにせ雲雀の制裁とダイナマイトを受けているのだから。

犬に至っては頭を重点的に殴られている←

 

「いくら単細胞だからって分裂はしないだろ普通!?」

 

「]世、分裂じゃない。あんなのが四人もいたら耐えられないから。

ついでに言うとアイツは普通じゃない」

 

「そいつには同意するぞ。

同時に四人に憑依するなんて聞いたこともねーな」

 

「それだけではありませんよ」

 

ツナへのダイナマイトの集中砲火。リボーンへのポイズンクッキングとヘッジホッグの攻撃。

リボーンは平気だが、ツナが危険だ。

 

「マズいな」

 

仕方がない。

ツナを抱え上げ庇うようにしてダイナマイトが飛び交う中を駆け抜ける。

]世を連れ出すのはリボーンが許さないだろう。

彼がいては本気を出せない。年齢制限Zレベルだ。

ビアンキのポイズンクッキングを横っ跳びに避ける。

なんで犬以外中距離攻撃なんだよ。]世を抱えたままどうやって反撃しろと?

 

ちゃん後ろ!」

 

千種の針を避けるのに集中して背後の影に気付かなかった。

ツナをソファに向けて放り投げ、同時に身体を捻って蹴りをかます。

確かに入ったのだが、痛みを感じないことを失念していてそのまま押し倒された。

 

「クフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

「長っ!」

 

「さあ、浜辺で追いかけっこはお終いですよ」

 

「うあああああ!!ちょっと待て本気で待て!」

 

食われる!色んな意味で食われる!

次第に顔を寄せてくる犬in骸を死ぬ気で押し返す。

こんなやつにセカンドキスを奪われてたまるかぁぁあぁあ!!

デッドオアアライブ。生きて帰れる気はしない。

あまりに倍率の違いすぎる賭けには絶望した。

 

「近い近い近い!」

 

「大丈夫ですよ。痛くはしませんから」

 

「何をしようとしてるんだよ貴様は!?

]世ヘルプ!!ヘルプミー!!Aiuta il decimo!」

 

「えぇ!?とりあえず骸死ね!!

オレどうしたらいいの!?」

 

そのガッツがあればいける!

いよいよ犬との距離が近くなる。そして口臭のひどさに涙が出た。

こいつ戻したら即刻総入れ歯にしてやる!

そうこうしてるうちに獄寺の魔の手がツナに伸びる。獄寺の尊厳のために言っておくが獄寺in骸だ。

 

「ああ!くっそ、骸あとで必ずその葉っぱむしってやるからなぁぁあぁあ!!」

 

自分の貞操は守れずとも]世だけは守らなければいけなかったのに。

半ば諦めがついたそのときだった。

 

 

 

<あとがき>

二連続で上げようと思ってたら無理でした。

思いの外展開が早くなったので、やめようかと思ってたシーンを書くか思案中。

そもそもワンシーン書き終わってるんですよねー(遠い目