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すごい。幻覚すら見破れなかったのに。

 

骸のローファーとⅩ世のスニーカーが奏でる二重奏を聞いてみると、Ⅹ世のほうが押していることが分かった。

 

キュッキュッキュッキュッキュ、すっげぇうるさいけど。

 

 

 

 

 

標的21 奥の奥の奥の手

 

 

 

 

 

空中からの攻撃が骸を襲い、背中を取られ彼は強烈なスピードで床へと叩きつけられた。

これに対してツナは優雅に着地。

華菜へと視線を投げると、白兎に差し出された救急箱から包帯を出しているところだった。

別にリュックを背負ってたりしないのに、刀といい、救急箱といい、どこから出してるんだろうか。

(白兎は次世代ウサギ型ロボットです(嘘))

ツナとしては骸を酢豚にするところを見てもらえなかったことだけが心残りである。

向き直ると骸がうめいて血を吐いていた。

もう戦えないだろう。

 

「まだだ・・・」

 

頭を持ち上げ、這いずるように骸は自分の得物に手を伸ばす。

止めるでもなくただ眺めていたのは、武器を取ったところで蚊ほどの害にもならないと知っていたからだ。

 

「まだ終わりませんッ・・・」

 

「あきらめろ。これ以上華菜に醜態をさらす気か?この下衆が。

 

一瞬躊躇するように動きが止まり、すでに興味を失ったようにこちらを見向きもしない華菜を見る。

骸は三叉槍を手放すような素振りを見せた。

 

「そうですね」

 

終わった。

ツナは安堵した。

一刻も早く華菜をこの場から連れ出したい。

こんな変態野郎と一緒の空気を吸わせるなんてッ・・・、あ、すげー手ぇ洗いたいんだけど。ほら見てよ、この蕁麻疹。

 

「ついに本性を現しましたね。純粋に見せかけてお腹真っ黒とは・・・」

 

「え、何言ってんの?オレはピュアチョコレートよりピュアだよ。オールホワイトだよ」

 

「貴方がオールホワイトだったら、この地球から戦争がなくなりますよ!

今のままでは俄然君に勝てる気がしません」

 

はっ、オレに挑もうなんざ一億と二千年早いんだよ。

明らかに見下したような態度に骸の目は若干潤み始めているようだ。

 

「ですから最終手段にでましょう」

 

僅かに閃くお得意の薄笑い。

 

一瞬理解が遅れ、背筋がひやりとする感覚にそっとしながら振り向いた。

三叉槍が向かった先。その直線上には獄寺、ビアンキ、フゥ太に治療を施す華菜がいた。

集中しているせいか、三叉槍に気付かない。

 

華菜!」

 

「ん?」

 

顔を上げると同時に僅かに動いた体は、その顔を切っ先の眼前へと導いた。

 

 

 

あと五センチ。

 

 

 

肩を狙った骸は焦った。

浅い傷なら責任を取って嫁にしようと考えていたから、多少の暴挙は顧みない。

だから殺すつもりは毛頭なく、渋々この手を使ったからと言って深手を負わせるつもりはなかった。

 

 

 

あと1センチ。

 

 

 

紫の瞳に切っ先が映り込む。

次の瞬間、三叉槍が弧を描いた。

回転しながら宙を舞ったそれは、乾いた音を立ててコンクリートの床に落ちた。

白い甲に残ったのは一筋の赤い傷。

華菜の顔が歪む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時に骸の頭が支えを失った。

華菜は顔を庇うような形で硬直する。

息を飲んで華菜が笑いかけてくれるのを待った。華菜ならば乗っ取られないかもしれないという、根拠のない期待が沸いたのだ。

しかしそんな淡い期待も無残に打ち砕かれた。

 

「クフフ・・・」

 

華菜はこんな変態臭い笑い声は出さない。

一声聞いただけで期待を打ち捨てる。苦虫を噛み潰したような顔をした白兎が視線で訴えてくる。

なんてことをしてくれたんだ、と。

包帯から手を放した華菜は、感触を確かめるように手を開け閉めした。

 

「素晴らしい身体ですね。今までの中で最上級ですよ」

 

無駄な脂肪も筋肉もない。動きやすくて理想的だ。

褒め称える骸の言葉に当たり前だと返す。

華菜の体なんだから。

 

「スタイルもなかなかのものですよ。僕の見立てでは上から」

 

「それ以上言ったら、もう六道輪廻を巡れなくなりますよ」

 

ヤツは本気だ。

白兎の殺気がツナにも突き刺さり、かなり興味を引かれてしまった手前、場を取り繕うように咳をした。

知りたくなってもいいじゃない。思春期だもの。 ふらむ

 

 

ヤバイ。超見られてる。

 

 

背中に突き刺さるような視線が痛い。というかこれ具現化して本当に刺さってんじゃないかこれ。

思わぬ方面からの攻撃の動揺が災いを招いた。

いつの間にか華菜が目の前に立っている。

その微笑みに我を忘れた。

 

「最高ですよ」

 

頬への抉るような一撃。

 

「がっ!」

 

「少々癖があるようですが」

 

脳が揺れたと錯覚するような威力だった。たまらずよろけて、無防備に体がさらされる。

続く脇腹へ刺さった一撃もとてつもないものだった。

 

骨、折れたか?

 

引く様子の無い痛みに四つん這いのまま脇腹を押さえてうめく。

このとき幸いだったのは骸が武器を使わなかったことだ。

華菜のタガーなど使われたら、体に染み込んだ技から意思に関わらず確実に急所を貫いただろうし、

銃を使えば必ず心臓か頭を撃ち抜いただろう。

その点では幸運だったが、ツナの不利には変わりなかった。

なるべく無傷ですまそうと先程のビアンキと獄寺のように手刀で首を狙う。

華菜は怯えた表情でびくりと震えた。

 

 

 

「やっ・・・」

 

 

 

「ッ!?」

 

まさかここに来てか。

いつもの力強いのとは違う、なよなよとした気弱な感じのエロボイス発動。

かつてない動揺が走ったツナは、そのまま一本背負いの要領で床に叩きつけられた。

あれは華菜の声じゃない!あのド変態の声だぞ!?何やってるんだオレは!

 

「おや、力の差というよりも、華菜という存在の方が邪魔になっているようですね」

 

「くっ・・・、華菜から離れろ!お前は駄犬とでも一緒になってればいいだろ!」

 

「犬は臭いから嫌なんです。

それに彼女は最早僕のものですよ。後で自分がボンゴレに契約させたと知れば、華菜はもう戻れなくなる」

 

攻撃を与えられず、あの剣も避けなくてはならない。

あまりの困難さに戦慄したが、華菜はもう待ってくれない。

 

 

 

<あとがき>

ツナはハイパーモードになると腹黒になればいいと思う。いや、いつも腹黒だともっといい。

今回のエロボイスはあれです。少女マンガでヒロインが殴られそうになった瞬間をめいっぱいセクスぃーにすればいいと思います←