恭弥、もし私がお前と出会わなかったならばどうなったと思う?
恋愛は常に不意打ちの形をとる。
そう言ったの口調は、まるで「明日は晴れると思うか?」と言っている風だった。
事実、彼女はケーキを口に運んでいるところだった。
「ん、おいしいな。」
もしかしたら幻聴だったのかと思い、無言での淹れた紅茶を飲むとまたが口を開いた。
「別に何も変わらないよな。恭弥は並中の風紀委員長で、不良の頂点にいるだろうし、私は母上にしごかれてるだろうし。」
とんでもない、と僕は思った。
がもしも、いなかったときの生活なんて考えられない。
けれど、僕は思っていることと正反対のことを言った。
「だろうね。」
「あはは、恭弥らしいな。」
銀色のフォークを自分の目の前でくるくると回しながら、は言った。
彼女はよく笑う。というか、笑ったところしか今だかつて見たことがない。きっと彼女なりの防御法なのかもしれない。
僕の前だったら、泣いたって構わない。僕だけにそういう姿を見せてほしい。
僕がここまで人に依存するなんてめずらしい。群れるのが嫌いなはずなのに。
窓から漏れた日光が、の髪に反射してキラキラと輝く。
「私のまだ短い人生の中で、恭弥がどれだけ大きな存在か知ってるか?」
ドクン
僕の心臓が大きく跳ね上がった。
彼女の行動は予測不能だ。こんなにも唐突に言うものだろうか?
僕が先に言おうと思っていたことを。
「大切なものは、失ってから気づくものだ、って言うだろ?
けど、恭弥のことは違う。失う前から大切だと分かってる。
というか、失いたくない。」
だから、さっきの恭弥の言葉はちょっと傷ついたなー。
そう言ってはまた笑う。
僕はカップをテーブルに置くと、言った。
「僕は確かに、がいなくても変わらない生活を送っていたと思う。
けど、がいなきゃ味気ないものになってたと思うよ。」
ちょうど向かいのソファに座っていた僕は、立ち上がっての隣に座った。
隣を見れば、先ほどとは違う嬉しそうな笑み。
綺な白い肌の頬に、うっすらと朱が差す。
「、顔赤いよ。」
「うるさい。」
は照れ隠しなのか、僕の口にケーキを突っ込んだ。
「甘いね。」
「私の愛の味と思って許してもらおうか。」
そんな言葉をサラッと口にできるのは君だけだよ。
自分でも分かるくらいに、顔が熱くなった。
恭弥の顔も赤いな!
そういって、が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
<あとがき>
種梨 緋月様からで、雲雀で甘でお送りしました!
これって・・・、甘ですよね?(聞くな)自分で書いてて、甘なのか分からなくなった管理人をどうぞ殴ってやってください(土下座)
そして、甘は苦手分野と発覚。短くてすみません!
リクエストありがとうございました!これからも、*現実逃避*とどうしようもない管理人をよろしくお願いします!