分からない、どうしてなのか

 

 

 

 

4.5 The wound of the soul

 

 

 

 

「じゃ、浅野いってみるか!」

「ええ!?先生、俺分かってないの知ってて当ててますよね!?」

「当たり前だろー!」

「いじめだー!職権乱用だー!」

啓吾と越智のやりとりを聞き、教室に笑い声が響いた。現在は、3時間目の現国の時間

は、日当りのいい席でうとうとしていた。別に昼休みの後だからとか、そういうわけではなく、いつもこうなのだが

もう、意識を手放そうかと考えていた時、誰かに肩を叩かれた

「んぁ?」

「んぁ?じゃねーよ。授業中だぞ。寝るなよ」

「うるせー。世界は私を中心に回ってんだよ!」

「どんだけ傲慢なんだよ!」

「とにかく寝かせろ。私には、睡眠という大変重要な任務があるんだ!」

「どこが重要だよ!?授業は大切じゃねぇのか!?」

「授業なんて、睡眠、食欲、の前ではゴミ同然だ!」

「私は入ってないのか?」

目を少しずらすと、少しさびしげなルキアの姿が目に入った。このとき一護は、ちゃんとツッコんでくれ とか思ったらしい

「もちろん!入ってるに決まってるだろ!」

「お〜い、そこで盛り上がってるとこ悪いが、今授業中だぞ?」

「大丈夫!問題ない!」

いや、おおありだろ、クラスの意見が完全一致した瞬間だった

は、授業中は体育以外ほとんど寝てるか、目が逝っちゃってるかどっちかだ。頭はいいが、体を動かす方が好きだというのが彼女の本質だ

それでも成績が優秀なのは、テストは模範解答以上にいい答えを書くし、困っている人はすぐに助けてやるというようなことをしょっちゅうやっているからだ

部活が大会で優勝するのに、一役買っているというのも入るが

別に成績のためにやっているというわけでもないので、よけいに評価が上がるのだ

これだけならいいものを、は授業中に集中していないので、オールAをいつも逃している

授業態度はいつもC、ではなく越智によりGという新たな単位が付け加えられた(ぇ

「そうだ!越智先生!罰としてさんにこの問題を解いてもらっては?」

「それもそうだな!」

「ちょっと待て!啓吾、てめぇ何言いやがる!」

「じゃ、!」

「ちくしょぉぉおおぉぉお!啓吾なんか嫌いだぁー!」

最後の発言に、ショックを受けている啓吾を睨みつけてから、窓の外を見る

どうやって逃げよう。別に余裕で解けるんだけど、めんどくさい

「お〜い、!さっさとしろ!」

こうなったら、アクマの気配がするんで、救済してきます!って言って教室から脱獄するか!

ようやく、逃げる案が思いついたところで、渋々立ち上がった

後ろにイスを引いて、立ち上がった

ズキッ

「つっ!?」

突然、腹部に痛みが走り、机に手をついた。強烈な痛みに意識が朦朧とする

、どうした?」

その問いに答えようとするも、痛みで声も出せない

全身から汗が噴き出す

、どうかしたか?」

ルキアが心配そうな目でこちらを見ている。心配ないと伝えたい

口の端を温かいものが伝い、ノートに落ちた

左側だけ字で埋め尽くされたノートに落ちたのは、真っ赤な鮮血

久しぶりだな。と思ったのもつかの間、腹部もやけに温かいことに気づいた

最初に異変に気づいたのは一護だった

、大丈夫か!?」

その声で糸が切れたように、床に倒れこんだ。周りが一気に騒がしくなる

ちゃん!?」

!?」

織姫とたつきが駆け寄る。は腹部を抱えたまま動かない

一護はを抱きかかえると、手をどけた

白いシャツに広がっていく、赤い血

前にも、何回かこういうことがあった

はじめは、幼稚園の頃。家でだったので、たいしたことはなかったが、次は園内で遊んでいた時だった

その日は教師がに暴力を奮っているのかと散々問い詰めてきた

なんとか説得したものの、そのあと9回ほど倒れ、小学校になっても何回も倒れた

中学では少し治まり6回ほどだった

そして、高校に入ってからはなかったのでもう治ったのかと安心していたのだ

だが、甘かったのだ

「越智サン、を保健室に運んできます!」

「あ、ああ!」

「私も行ってきます!」

「おい、朽木!?」

を横抱きにした一護を追い、ルキアも教室から出て行った

 

 

 

倒れるたびに、恐怖に襲われた

を失うかもしれないという恐怖

俺はもうがいなきゃ生きていけない

おふくろが死んだときだって、がいたから立ち直れた

いつも、死ぬほどのケガではないが、倒れるたびに俺は恐怖する

俺のなかでは絶対的な存在の

お前が傷つくだけで、俺の世界は揺らぐ

 

保健医に手当てをしてもらっても、俺の中の恐怖は晴れなかった

そわそわと歩いていると、ルキアが入ってきた

「ルキア・・・」

「何をしょげた顔をしている。は強いのだから、大丈夫だ」

確信に満ちた顔。何故、会ってから間もないルキアがそんなに確信できるのだろうか

俺は、手近なイスをが眠るベットに引き寄せると座った

の『アレ』は、コイツと俺が幼稚園の頃からなってたんだ」

「そう。」

「しかもそれは、いつも刃物で切り付けられたような傷だ」

「それに、次の日には治ってるんだぜ。なんにもなかったみたいに」

「不思議だな」

時々相槌を打ちながら、ルキアは一護の話を聞いていた

 

 

 

は死んだ

受け入れたはずだった

なのに、目の前で眠るをみると信じられなくなる

性格も、容姿も全くの生き写しの

のように、誰もに好かれていた

彼女を見ていると、あの事件は冗談好きなの大掛りな冗談だったに違いないと思いたくなる

それもかなり質の悪いもの

流魂街で、身寄りのない恋次や私によく世話をしてくれた

しょっちゅう更木に行っては、子供を拾ってきて最低限生活ができるまで世話を焼いていた

どうしても、が重なってしまう

お前は何故、行ってしまったのだ

尸魂界ソウルソサエティは、今もお前が必要なのに

お前が最も気にかけた、十番隊隊長と五番隊副隊長をも残して

 

倒れたが、あの事件の現場に倒れていたであろうに見えて、私は教室を飛び出した

保健室に駆け込むと、そわそわと歩きまわっている一護がいた

横たえられたは、さきほどよりも顔色が良くなったように見え、私は安心した

一護は力なく私の方を向いた

「ルキア・・・。」

「何をしょげた顔をしている。は強いのだから、大丈夫だ」

そう。にここまで似た人物がこんな弱いはずがない

イスに座った一護が、自分を落ち着かせるように話始めた

聞けば聞くほど、謎が湧いてきた

刃物でつけられたような傷。次の日に消える

の腹に手を近づけると、微かに霊圧が集中しているのが分かった

常人が霊圧を扱えるはずがない

、お前はなんなのだ?

 

 

 

倒れるときに感じることが二つある

それは、頭の中を映像のようにして流れてくる

一つは男の二人組が、刀で私に斬りかかってくるところ

二人とも笑みを浮かべており、私は驚くでもなくこうなることが分かっていたように、受け入れていた

ただ、止められなかったことを悔やんでいた(何を?)

もう一つは、その時思ったこと

よく夢に出てくる、銀髪の少年

私は少年と縁側に座っていて、お茶を飲んでいた

今度流魂街で花火、見に行くか(約束)

少年はそう言った

私は、この映像の中の誰も知らない(分からない)

何が関係あるのか?

口から上は霞がかかったように見えない

この記憶は何を教えようとしているのか(分からない)

どうして、少年がいるのか(分からない、どうしてなのか)

 

目を開けると、心配そうな一護の顔と、分かっていたというようなルキアの顔

、大丈夫か?」

「ああ、もうばっちりだ」

もう腹部に痛みはない。おそらく、すでに傷跡もないだろう

「お前なら大丈夫だと思っていた」

「私はそんなに馬鹿なのか?」

ルキアの一言に、冗談交じりに言葉を返す

取り合えずあの記憶は置いておくことにしよう

それより、大切なものがたくさんあるのだから

 

 

 

<あとがき>

はじめはギャグなのに、あとはシリアス

ちょっと、ヒロインの記憶を出してみました!

時間軸は4話よりも2、3日あとです