真面目に仕事に取り組む筆の音をかき消すように、咀嚼音が耳につく
しばらく耐えていた日番谷だったがついに耐えきれなくなり、筆をへし折ると、勢いよく立ちあがった
「毎回毎回、サボりにここに来るんじゃねぇっ!!」
「サボってない!ノルマはちゃんとやりましたー」
「追加分もやれよ!書類止めてんのお前か!?」
「いんや?他にも止めてるヤツが」
それを聞いた日番谷は頭を抱えた
拾われたときから自由奔放だってのに、一切全く成長してねぇ・・・
おまけに身長もほとんど変わっていない。もう少しすれば日番谷が背を抜かせるのではないだろうか
これから回ってくるであろう期限ギリギリの大量の書類
それを想って日番谷は呻いた
そんなこと意にも介さずは煎餅の袋を片付け、大福に取りかかる
毎度のことながらどこから出してくるのだろう。鞄らしきものは持っていないのに
これは尸魂界七不思議に入るほどの謎だ。今世紀最大かもしれない
「眉間のシワ取れなくなるよ」
「誰のせいだ、誰の」
「乱菊?」
「あいつも・・・、おい!松本どこ行った!?」
「さっき居酒屋行かないか誘われた」
「松本ォォオオォオ!!」
彼はなんで止めなかったと睨んだが、サボり仲間を売るヤツがどこにいるとけろっとした顔で言い返され、深く椅子に沈みこんだ
誰かこの位置変わってくれ
気まますぎる幼馴染。昼間から堂々と酒を飲みに行く副隊長
松本さえ変わってくれれば楽になるはずなんだ。副隊長の松本がしっかりしてくれればが来ようが、茶を出す指示を出すくらいには余裕ができる
その後隊舎に連行する余裕も
事実日番谷が今やっている仕事も、いつの間にか、混ざっていた乱菊の仕事だ
「問題児二人も相手して大変なこった」
「認めんなら改善しようとかいう考えを出せ」
「あ、ムリ」
自分の額に青筋が立つのが分かった
「そんなに怒んなさんな
近いうちに来なくなるから」
「どっかの地区担当でも任されたのか?」
「んー」
曖昧な返事を返されたが、いつものことだし、どこからともなく取り出された甘納豆の包みを全力投球され、
詳しく聞きそびれてしまった
この時ちゃんと聞いておけばよかった。あいつが地区担当は面倒だから嫌だと、
口癖のように言っていたのを覚えていればよかった
「私に何かあったら桃を頼むよー」
「なんだよ。気持ち悪ぃな」
「一番弟子に可愛い可愛い妹分を頼んで何が悪い。お前の方が隊舎近いからいいだろ
光栄に思え」
「なんでだよ!っつか弟子になった覚えはねぇっ!」
というのは照れ隠しだった。が頼るのは、ほとんど初めてに近かった
しばらく無言のまま、二人は自分の菓子に没頭suru
こいつの作った甘納豆のおかげで好きになったなんて絶対言ってやらねぇ
調子に乗るのは目に見えている
珍しくお手製のものだった。いつも面倒だと断る彼女だから、これで何かおかしいと気づくべきだった
サボりを大いに満喫したのか、は立ち上がって死覇装を叩くと思いっきり伸びをsuru
そしてこちらを向いた
短く切られた銀の髪が風に舞う
「後は任せた」
「は?」
どういうことだと聞く前に、は瞬歩で消え去った
「・・・・・・ったく、なんだってんだよ」
違う意味でまた調子を乱された日番谷は頭を掻いた
ふと彼女が今まで寝そべっていたソファーを見ると、紙の束が残されている
不思議に思い手に取り、文字の羅列を見た日番谷は怒り心頭した
「あんのやろ・・・ッ!!」
提出期限は本日まで
風が隊主羽織をはためかせる
目の前にあるのは白い花束の添えられた簡素な墓
そこに眠るはずの体は、ない
彼女が一番好んだ丘の上で、日番谷は固く唇を結んだ
彼女の愛した流魂街が朝日に照らされ姿を現す
言いたいことはたくさんあった。なのにあいつばかりがいつも喋り、俺は何も言えず仕舞いだった
それでもあの笑顔に、弾むような声を聞いていると、そんなことはどうでもいいと思えた
所詮はかまって欲しかっただけかもしれない
お前は何を知ってしまったんだ
なんであの時俺に話さなかった
なんで・・・・
「もう一度だけ逢いてぇ・・・・・ッ」
(一度だけなんて言わずに)(全てを話せなんて言わないから)(ただ逢いたい)(それだけなのに)
<あとがきと思いっきり私信>
朔夜さんより「日番谷でギャグ、シリアス混じり」でお送りしました
後半はモロシリアスですが、気にしたら負けです←
バタバタしてて書くのが遅れて申し訳ない・・・。夏休みに更新しまくるZE☆とか言いたいけど、生憎予定が満載・・・
反省はするが後悔はしない(ぇ
リクありがとうございましたっ!実はこれが二ヵ月前には書きあがってたなんて、死んでも言えない!!