「せんせぇー!」
光の速さで釘に滅多刺しにされた某ヤギの写真をゴミ箱へ突っ込んだ。
写真にはその憎らしい顔を横切るように『金を食うならオレにくれ』と書いてある。
今度給料削減したら某ファンタジーゲームの]Vに出てくる羊だかカエルだか分からん生物にしてやる。
しかし重いトビラに苦労して入ってきたステラを見て、瞬時に天使の笑顔へ切り替えた。
体操服の裾握りしめてうるうるした目で見つめてくるステラは犯罪だ。いじめたおしてあの可愛い足で地団駄とか踏ませてみたい。
そんなことをしたら間違いなく踊らない大捜査線が敷かれるので、仕方なく名案を廃棄して足がぷらぷらするように計算された椅子に座らせた。
「どうした?膝でも擦りむいた?だったら私んとこじゃなくてノアのとこに行きなさい」
短パンからチラリズムする膝小僧に異常はない。
「め、めりーさんが」
念のため絆創膏でも渡しておこうと常備してある救急箱をがさついていると、震える声が聞こえてきた。
メリーさんとは学園で飼っているヤギのことで、羊ではないうえに相当可愛いのであろう羊を飼っているお姉さんのことでもない。
校長がキメラキメラと騒いでいて、期待ワクワクでお披露目されたらヤギの胴体、ヤギの頭、ヤギのシッポでただのヤギだったのであのアゴヒゲ抜いてやった。
しかも何故か異様に戦闘能力高くて、口の中は毒ヘビという質の悪さだったので今度はレモンの皮で目を潰してやった。
「メリーさん?メリーさんがどうかした?」
「い・・・」
「い?」
「いなくなっちゃったぁ〜!!」
犯行現場は第1ラボの生物保管施設。
ノア的に言えばそうだが、ぶっちゃけちょっと警備の固い動物小屋だ。
ここには首領ゼミとか首領モドキとかヤギネコとかゼラチンヤギとか、あとたまにロレンツォとかが収容される。ちなみに影武者キメラ首領モドキはいない。
その最奥にキメラの小屋はある。お向かいさんはロレンツォだが今のところはいないようだ。
「先生」
「よ。圭に優太。今日も美脚してるね」
「いつでも踏んであげますよ」
「今はやめとく」
「今は!?じゃあ、明日とか明後日ならいいの!?」
「その時はいつもの忘れないでくださいね☆」
「それって俗に言う援交ってやつですよね?」
払うのは洋の激レア写真だけど。
現場を調べると小屋の柵は無惨に溶けて、原型を留めていなかった。
「誰かのイタズラですかね?」
「いやこれは・・・」
足跡確認。右確認。左確認。
も一度足跡二度見。
「ノアだ」
「ノア先生が!?」
「多分サクラの栄養剤の改造版でも作ったんだろ。ヤギの神経毒が硫酸に変わってる」
「えー、つまんなーい」
「優太くん、多分荻さんにも硫酸は効くから」
私も鉄人遺伝子継いでるけど、子供のころの科学実験でうっかり濃硫酸こぼして鉄クズになりかけたっけ。
甘酸っぱい思い出が痛くてしょっぱいものに変わった瞬間だ。
これは荻が鉢合わせる前に小屋に連れ戻さなければ。
「よっしゃ!捜索隊出動!発見したやつには金一封!」
『イエスマム!』
最後の一言に反応したのは優太だった。そして内容を分かっていないだろうステラは、慌てて後についていく。
その間に現場検証だ。この21.5センチがどこまで歩いていったのか調べなきゃ。おっしゃ、マフィア×ポリスオフィサーの力舐めんなよ。
「ここで部下を召か」
「さんさん」
「何!?今テンション無限 大で何でもできちゃう気分なのに!」
「優太くんとステラにあのヤギを追わせるのは危険ですよ」
「仕方ないだろやつらは選ばれし者だ。事件は校内で起きてるんじゃない、下駄箱で起きてるんだ!」
「ノアさんの場所分かってんならお前が行けよ!」
いや、急に持病のこむら返りが(ぇ
何気に機動隊とかが持ってそうな盾を抱え、万全体制だった圭に襟首掴まれた。
なんだ、金一封に釣られたのはお前もじゃないか!
そのとき、ちょうど事務毛鉢を持った洋が施設前を通った。
電球飛び出る我が灰色の脳細胞!
「洋!ちょっと来てー!」
「なんだー!?」
「なんだじゃなくてこっち来てよー!」
しかし一向に来る気配がない。しかも露骨に嫌そうな顔をしている。
仕方なくこちらから出向くことにした。
「緒方呼んできて」
「嫌に決まってんだろ!オレに死ねって言ってんのか!」
「いーじゃん。どーせ洋、暇でしょ」
「常に忙しいわ!現に今は〇平さんとこに行くという大事な任務があるんだ!」
「はあ?」
記憶の中の波○さんはハゲだった。
洋の好きな毛が三本しか生えていない。つるピカのとこに行く洋などただの犬だ。洋から毛フェチを抜いたら何が残る。
そのうえ足の手入れがなってない。肌はカッサカサ、脛毛の処理もダメ。赤点どころか負点だ。
あ、言っとくけど、○ザエさんとは無関係だからね。
「つるっぱげの波〇さんとこ行ってどうすんの?育毛剤でもぶっかける気?」
毛フェチからハゲフェチに路線変更したのかと思っていると、洋は人差し指を立てて、甘いな、とでも言うように振った。
「あの激レアな毛が今朝見たら二本になってたんだよ!」
「はあ?」
「あの人は出無精だから、確実にその一本は自宅にある。奥さんが掃除機かける前に探してこなきゃあいけねぇんだよ」
いや、まあ、確かにあのたった三本の毛が風になびいてやけに輝いていたのは記憶に新しいけど。
その毛フェチ精神は理解し難いが、かくいうの足フェチも理解されない。
この前原宿でミニスカ高校生の足を写真に納めてたら、危うく警察にしょっぴかれるところだった。ギリギリセーフだったのは一重に何故かその場に荻がいたからで。
私が連行される寸前の荻すごかったな〜。閻魔様もびっくりの剣幕だったよ、うん。
そこから今度梓と若葉さんに会いに行こうとか、今年も熊狩りに行くんだろうかとか脳内で話が飛躍する。
いや、今は荻ファミリーと楽しい思い出作り計画を考えてる場合じゃない。
「つーか、なんで緒方?荻でいいじゃん」
〜事情説明中〜
「というわけで」
「そりゃ、大変だ」
「だから緒方を頼むよ〜。
先輩なんだから、後輩を助けろ!」
「だったら敬意を表せ。
よし、先輩からありがたい助言を託してやろうじゃないか 」
いや、貴方が行けば万事解決なんだけど。
しかしそんな空気も全く読まず、洋はいい笑顔で、
「事件は学校で起きてるんじゃない、○平さんの家で起きてるんだ!」
「あんただけだよ!」
圭のツッコミが炸裂。
だが毛に血迷った洋にはノーダメージで終わり、伝説のポケモン・洋はフィールドから逃げ出した。
めりーさんの居場所を探すにはゼラチンヤギとかに話を聞く必要がある。だけど人外語が操れるのは緒方だけ。は緒方のとこなんて絶対行きたくない。
ステラの願いを叶えるためには私が犠牲になるしかないのか!?
苦悩の呻き声を上げて頭をかき乱したとき、急に圭が腕を掴んだ。
「圭、こんな人目のあるところで・・・」
「少女マンガか。
違いますよ。髪の毛ですよ。確か一時期因幡さんはさんの毛に執心してませんでした?」
そういえばそうだ。
考えれば初めは一日中張っていた洋も、五分、十分、十一分、十二分と減っていき、今では昼休みに張り付いているだけである。
「途中で減り方おかしかったですよね」
これは魚肉ソーセージで狼を釣れる!
「洋、ちょっと待って!」
「ああ!?」
すでに洋は校門前にいた。早い、早いよ。
「緒方連れてきてくれたら、私の髪の毛あげるよ!まだコレクションしてないよね!?」
の毛は非常に抜けにくかった。自分でも風呂で頭を洗うと、五回に一回くらいの割合で数本見つけるくらいだ。
さらに誰もが羨む美髪ときた。
「なんだよー、だったらそれを早く言えよ〜」
「うそぉ!?」
校門の洋に向かって語りかけていたのに、いつの間にか本人は目の前にいて、ロープでぐるぐる巻きの緒方を引きずっていた。
現役SPがこんなことでいいのか。いや、よくない。
「髪の毛自由にさせてくれんだよな?
どーしよっかなー、思い切って三つ編みにしちゃおっかなー」
「そこまで言ってない!
ああ!早くも編み込みになってるし!
くそ、お前が神の手を持つ者か!」
「せんせぇー」
「先生、中二病ですか?」
「なんや、こんなとこにおったんか。実はキメラヤギを探して欲しいんやけど」
優太+ステラ+ノア確保。
まさか全ての元凶がこんな呑気だなんて思わなかった。だってタパ○タのイカスミ味食ってるもの。洋おすすめを食ってるもの。
タパ○タは普通に茹でてもおいしいらしいぜ!
「今度は盛られてる!?」
「先生!あそこに選ばれし者しか抜けない伝説の剣が!」
「うおお、勝利を我が手にぃぃいぃい!」
「それキメラの角だから!抜かないであげてかわいそうだから!!」
後日、キメラヤギは無事捕まり、その日の晩御飯はジンギスカンだった。
「そうだ、こーゆうヤツ(ら)だった」
(ところどころヤギ肉混じってるけど気にするなよー)(首領ォォオォオオオン!!!!)(メリル―、おかわりー)(メリル―、髪の毛ちょうだーい)
<あとがき>
最後の台詞には当然ロレンツォもいますよ。どれかはすぐに分かるはずだッ!
夢主設定をちょこっと
仮名前:メリル・(未定)
品種?:秘密機動隊員
備考;娘でもないのに荻の鉄人遺伝子を受け継ぐイタリア発の秘密機動隊員。
秘密警察犬繁殖のためにステラとともに日本に来日。メリルは研修だと思っている。
荻には昔面倒を見てもらっていたので仲良し。荻はメリルを娘のように思っている
実はとあるマフィアの跡継ぎでもあるが、ヴァレンティーノとは敵対。
足フェチ。一番の理想はガブリエラ。
詳細は追々決めていこうと思います。